35人の14歳の50日間。すべての瞬間が尊く美しい。「14歳の栞」【映画レビュー】

映画

こんにちは、たつまです。

ここ3年ほど足しげく映画館に行くようになりまして。
ただ、メモ以上のものを残してこなかったために、リアルな感動と感想が薄れてきている気がしてて。
なのでこれからは映画感想を残していこうかと。

コロナ禍で公開延期になった作品たちが2021年になって続々と公開されてる。劇場で邦画を見る機会が目に見えて増えてる。今年も邦画が豊作で。今回はそんな邦画の中から「14歳の栞」の感想を書きますよ。

もくじ

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映画「14歳の栞」

とある中学校の3学期、「2年6組」35人全員に密着し、ひとりひとりの物語を紐解いていく。
そこには、劇的な主人公もいなければ、大きなどんでん返しもありません。
それなのになぜか目が離せないのは、
きっとそれが「誰もが通ってきたのに、まだ誰も見たことのなかった景色」だから。
そしてその35人全員が、どこか自分と重なってしまうからかもしれません。
まだ子供か大人かも曖昧なその瞬間、私たちは、何に傷ついて、何に悩んで、
何を後悔して、何を夢見て、何を決意して、そして、何に心がときめいていたのか。
これは、私たちが一度立ち止まり、
いつでもあの頃の気持ちに立ち返るための「栞」をはさむ映画です。

公式HPより抜粋

きっと彼らの日常は観る人誰もが通った時間だと思う。そんな時間のすべての瞬間が尊かったんだと気づかれされる。ありのままに密着するからこそ生まれる特有のグロさも含みながら、彼らを温かい眼差しで見つめる作品。

普通の14歳の生活に密着するということ

そんなとこまで映すんだ!?

この作品の密着は教室の中だけじゃなかった。部活後の帰り道や、家のリビングにまで密着する。
バレンタインの一部終始にも密着する。
いわば彼らのプライベートの時間も映している。

SNSでの心無い言葉が重大な問題になる今。
”普通の中学生の生活”を記録し、世の中に公開することは相当の覚悟が必要だっただろう。
密着する側にも、される側にも。学校の職員や生徒の家族にも。

どこかで踏み外せば、心無い言葉が生徒に向けられうる。
危うい可能性を踏まえながらも温かく密着した制作陣は本当にかっこいい。

作中、教室で一人ひとりにインタビューする場面がある。
おそらく複数の大人に囲まれながら話しているだろうに、生徒は普段どおり話していた様に見える。
生徒たちとの関係を積み上げるために、どれほど丁寧に向き合ったんだろう。

抜群のロケーション

映画のためにロケハンして、画面に映える場所を探したのかと思うくらいロケーションがいい。
学校の裏に河川敷があって桜が咲いてるって、フィクションの中だけじゃないの?

河川敷って舞台装置としてすごくいい。二人で歩けば淡い色恋が始まりそうだし、川べりに座ればでっかい夢を語る目になる。青春だ。

クリープハイプ「栞」

主題歌がこれまたいい役を担ってて。エンディングのはずなのにオープニングのような。
まるで14歳が彼らの人生でまだまだ始まりであることを示すかのように。

調べてみるとこの曲は2018年リリースで最新ではない。どうやらこの曲がきっかけになって企画が立ち上がったみたい。

主題歌にもなっているクリープハイプの「栞」を、より長く愛される曲にしたいと、ユニバーサルミュージックに栗林さんが相談を受けたことがきっかけだった。
曲の中にでてくる「簡単なあらすじなんかにまとまってたまるか 途中から読んでも意味不明な2人の話」という一節に、過去に体験した“曖昧な感情や関係”が蘇ってきたという栗林さん。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/shiori_jp_604cbd98c5b60e0725f77871

そりゃ作品との親和性はバッチリですわな。
歌詞はもちろんなんだけど、疾走感というか不安定ながらも走り抜ける感じがぴったりでした。
映画を見てから一週間はずっと脳内リピートでした。

14歳という年齢

14歳っていう年齢もまた絶妙で。
13歳(中学一年生)ほどの初々しさはなく、15歳(中学三年生)のように進路が決まっているわけではない時期。宙ぶらりんの真ん中で、心の機微に揺さぶられながら未来を模索している状態なんだと思う。

それ故にそれぞれのベクトルで過不足しながら成長していく。年を重ねてからでは恥ずかしくて口にできない夢や、人に伝えられない本心、要らぬプライドが邪魔して伝わらない気持ちなどなど。
これぞ思春期!なシーンで溢れている。

「中二病」とは、思春期の子どもたちに見られる特有の背伸びしがちな言動、態度が過剰に発現している状態のことを指します。「病」という表現を含みますが実際に治療が必要とされる医学的な意味での病気、または精神疾患とはまったく関係ありません。ラジオ番組『伊集院光のUP’S 深夜の馬鹿力』で生まれた造語になります。

【中二病の正しい意味と使い方を解説】 – Oggi

根拠なく強気でいられたあの頃、小さなことで思い悩みそれが人生の全てだと思っていたあの頃、むかーしの記憶と一緒にしまい込まれていた感情が引っ張り出された。それに加えて思い出したい感情がたくさんでてきた。帰ってから思わず卒アル開いたもん。
14歳って最強なんだな。

あのころを俯瞰する

自身の14歳の頃と比較してしまう人は多いのでは。ご多分に漏れず自分も比べてしまいました。
作中のあの子はあの頃のアイツだなとか。自分の中学校はもっと古かったとか。

当時は自分の視点から見えてるものだけを見てた。当たり前なんだけども。
自分と違うグループにいる子にはあまり興味を示さなかった。ほとんど喋ることなく卒業してしまった同級生もいると思う。

作中では教室の中の景色だけでなく、その背景にある家庭や個々の時間も映した。そこに何があるかというと、教室では物静かな子がクラスのお調子者と遊ぶ姿だったり、帰宅部の子が家でなんとも美味しそうなお菓子作りをしていたり。
そんな裏側を見ると、当時あまり関係を持たなかった同級生を思い出す。そしてその子の「家では…」や「教室の外では…」を想像した。自分のあの頃との答え合わせ。というよりは新しい興味を生んでくれた。
自分の過去に俯瞰的な目線を加えてくれるのもこの作品の素敵ポイント。

記録することで、彼らの人生にしおりを挟む。
公開することで、見る人のしおりの挟まれた14歳のページを開く。
すごく心地よく温かい映画。

時間が経てば経つほど感想が増えていく、今までにない余韻だった。
改めてこの時代にいわゆる一般の中学生を撮影した制作陣に感謝です。
中学生の周りの大人たちもすごい。
なによりも、密着された35人が素敵すぎる。

まだ観てない方はぜひ。劇場にて。
14歳だったことがある人には強くつよ〜くオススメします。
あ、弊Podcastでも少し話しているのでぜひ()

apple podcastはこちら↓
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E5%96%AB%E8%8C%B6%E3%83%9B%E3%83%9C%E3%83%8F%E3%83%81/id1517874873?i=1000516572441

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